楽器を練習するとき、
バイオリンの場合は特に
音程が難しいので、
音程から練習する人が
多いと思います。
それから、リズムもつけて
弾けるようにしたり、
弓使いを決めたり覚えたり。
このあたりまでは
楽譜の通り弾けば
だいたいの形ができて
曲の土台となります。
そして、
この先がなかなか大変です。
曲の流れを感じながら
時間の中で抑揚をつけたり
フレーズ(音楽の中のまとまり)
を考えてわかりながら
弾けるようにしたり。
そうしているうちに、
弓使いや指使いの新しい
アイデアが出てきて
しばらく迷ったり。
曲のイメージと体の動きを
合わせて
動いていけるようにも
しなければなりません。
いろんなことを網羅しながら
楽器という道具を
自分の感覚で
弾きこなしていく必要が
出てきます。
これには
かなりの集中力と体力と
思考力を使います。
行き詰まって
立ち止まることも度々。
何日もこうやって
あれこれ課題をこなし、
ようやくひとつの形が
出来上がってくる
といった感じです。
曲を仕上げていくというのは
こういう流れを取ることが
多いと思うのですが、
大事になってくるのが
先を想像すること、
過去と現在と未来を
関係づけながら
創っていくことです。
書いてある音符を
弾いていくだけだと、
なんというか
無味簡素な感じにしかならず、
「表現」とまではいかないです。
音を並べてみた、
という感じでしょうか。
流れを見ながら
時間や表現の
バランスを取り、
本当に表現したいことを
自分の中から絞り出して、
ごまかさないで
忠実に表していく。
それが出来るための
技術や精神性がないと
表現ができない。
できるように工夫もする。
他のパートの動きも
わかって
頭の中でアンサンブル
できていないといけない。
まあ、なんて
大変な作業だろうと
思います。
だから、
一つ一つ積み重ねて、
「一つ」が大変ではないように
練習して覚えていく必要が
出てきます。
忘れないように
いいものを自分の中に
残し蓄えていく。
本当に
何層もの数え切れない
経験と知識の層に
支えられての演奏です。
数時間弾いたとしても
一日でできることは
ほんのわずか。
できる時間に
できることを積み重ねて、
沢山のレイヤーを
コツコツ創っていくしか
ありません。
でも、
そうやって蓄えたものは
ちゃんと演奏に表れます。
というより、
無意識のうちに表れるので
ごまかせないものです。
楽器を弾くということは
毎日がこんな
地道な作業と創造に
支えられています。
なので、
生徒さん方も、
時間があまりなくても
音が出せなくても、
やれることは探せば
あります。
一日ひとつでいいので、
何か自分にいいものを
残す時間を
作ってほしいなあと
思います。